ほどよい母親
「ほどよい母親」という考え方は、ウィニコットという精神分析家が提唱していました。最近の発達心理の考え方でもある、メンタライジング理論に通じるものがあります。
生まれたばかりの赤ちゃんは、何も分かりません。だから、おなかのあたりがグルグルして、気持ち悪くなってきたら、オギャーオギャーと泣きます。するとお母さんがやってきて、「おなかすいたのね」と言って、母乳を飲ませてくれます。そして、赤ちゃんは、この、おなかのあたりがグルグルして気持ち悪いことを、「おなかがすいた」と言うのだと理解し、食べると気持ちよくなると気づくことができます。
このようにして、赤ちゃんは多くのことを親や周りの人から学びます。これがメンタライジング理論です。赤ちゃんと目を合わせながら、話しかけることはとても大切です。
では、赤ちゃんの要求に常に的確に応じる母親が良い母親なのかと言うと、そうではありません。母親が、子どもの要求を全て完璧に満たしてしまうと、赤ちゃんは欲求不満を感じることができなくなってしまいます。そして、人生での様々な問題に対処できなくなってしまいます。
常に子どもの要求を満たし続ければ、子どもは自分の欲求に気づくことができなくなり、人生を切り開く力を失います。だから、転ばぬ先の杖のような子育ては、子どもの成長を阻害してしまいます。時には子どもに欲求不満を感じさせるのが、程よい母親だと言えます。
欲求不満が人を成長させるのです。