丸ごと受け入れること
先日、認知症研究の第一人者の長谷川和夫先生が、ご逝去されました。聖マリアンナ医科大学に在籍中、私もご指導を受けたことがあります。長谷川先生はご自身が認知症になられて、その体験から、「認知症は確かさが揺らぐ病気だ」と言われたそうです。
例えば、認知症のお年寄りは、ご飯を食べたことを忘れてしまうことがあります。
おばあさんが、「ご飯はまだか?」と言い出すと、お嫁さんは、「さっき、食べたばかりじゃないの。しっかりしてください」と応じて、おばあさんの確かさを揺らがせてしまいます。すると、おばあさんは、確かさなことが分からなくなり、気持ちが不安定になって怒り出すかもしれません。
認知症の方に対応するときに、本人の現実を否定してはいけません。本人が感じていること、思っていることをそのまま受け止めるのがよいとされています。
ご飯を食べてない → すぐ用意するから、そこのお菓子でも食べていてください
財布がなくなった → 後で一緒に探しましょう
そんな具合です。
さて、これは、認知症だけのお話しではありません。コミュニケーション全般に共通することです。
誰とでも、話をするときには、その人が感じている現実を、丸ごと、認めてあげる必要があります。例えば、お子さんが何か言ったら、頭ごなしに否定しないで、「そうだったんだね。話してくれてありがとう」と、そのまま受け入れてあげてください。きっと、お子さんの気持ちが安定するはずです。