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「考えない、我慢できない、頑張れない」

[2020.12.20]

 私が小学生だったころ、電卓が普及しました。私は、親に、電卓があるんだから計算問題なんかしなくていい、と主張しましたが、自分の頭でやりなさいと叱られました。

 コンピュータは、人間が楽をするために開発されました。だから、使えば使うほど、脳が楽をして、退化してしまいます。そういえば、私も、カーナビやスマホのおかげで、地図を読むことがなくなりました。携帯電話になってから電話番号も覚えなくなりました。(考えない)

 それどころか、スマホやタブレットには強力な依存性があります。
 動物は、動くものが大好きです。ネコも、触ると動くものに夢中になります。スマホやタブレットは、脳内報酬系神経回路を激しく刺激して、人々を夢中にさせます。皆さんも、説明書なんて読んだこともないのに、いつの間にか使えるようになったのではないでしょうか。
 そして、スマホを使い続けた後は、脳内報酬系神経回路が疲弊してしまうので、どんよりした気持ちになって、何もやる気が起こらなくなります。(がんばれない)

 近年、囲碁では、プロ騎士がAIと対戦しても勝てなくなったと言います。コンピュータの進歩は目覚ましいです。しかし、AIと対戦中の騎士の脳波を測定すると、前頭前野が全く活動していないのだそうです。もちろん、人同士の対戦では脳全体が活動しています。
 前頭前野は、 人間らしさに関わる高度な機能に関与しています。想像力、忍耐、コミュニケーションなどをつかさどる部位です。
 つまり、AIとの対戦と、人同士での対戦では、違うゲームになっているのです。効率の良い手を打ち続けることだけが求められるなら、人はAIに負けてしまいます。しかし、人同士の対戦では、相手の呼吸や視線、身振りなどの空気を読む、コミュニケーションや駆け引きが重要になっているのだろうと思います。

 例えば、私も、コンピュータで将棋ゲームをしていて、負けそうになるとリセットボタンを押してしまいます。相手が人間なら、そんなことはできません。人同士の対戦では忍耐が求められて前頭前野が鍛えられます。
 負けそうになってリセットボタンを押してしまうのは、3歳児の行動です。幼児は負けそうになるとゲームをグチャッと崩してしまいます。コンピュータで遊ぶことは、脳を3歳児のレベルに退化させることになります。(我慢できない)

 SNSでも同じことが起こります。SNSでは前頭前野が働きにくいので、想像力や忍耐がなくなって、感情がむき出しの残酷な投稿をしてしまいます。コミュニケーションが発達していない子どもたちならなおさらです。SNSを使う前に対面でのコミュニケーションを訓練して、忍耐や想像力を鍛えなければいけません。

 最近、発達障害が増えているといわれます。その一因は、生活の細部に入り込んでしまったコンピュータにあるのではないでしょうか。今時の小中学生は、算数の宿題をググって済ませるそうです。
 コンピュータを使い続けることで、「考えない、我慢できない、頑張れない」そんな人間が増えてしまうのではないかと心配になります。

スティーブ・ジョブズや、ビル・ゲイツは自分の子どもにコンピュータを与えなかったのだそうです。
(東洋経済の記事にジャンプします。)

自分の頭でやりなさいって、叱ってくれる大人が必要です。

 

 

この内容は、予防医療研究所の磯村毅先生に教えていただいたことです。

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