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はじめに言葉ありき

[2020.07.19]

よく心理学の教科書では、「意識」と「無意識」の関係が氷山にたとえられています。海面に浮んで見える意識の部分は、巨大な氷山の一画でしかない、という例えです。

私は、かなり違うイメージを持っています。

「無意識」という真っ暗な巨大な空間を、「言葉」がサーチライトのように照らし出し、照らされた部分が「意識」になる、というイメージです。

「無意識」には、ものすごいエネルギーを持った「感情」が無秩序に混とんとして渦巻いています。
一方、「意識」は「言葉」によって成り立っています。「言葉」は、ルールに従っていて、秩序だっています。だから「意識」は論理的、理性的、合理的なものになります。

例えば、「勉強したいのに、できない」という葛藤は、「意識」と「無意識」の対立です。試験に合格したいなら勉強するのが合理的です。それは、頭で考える「意識」的なことです。しかし、遊んでいた方が楽しいかも知れません。「無意識」は、「感情」に結び付いているから、とても大きなエネルギーを持っています。だから、人は楽しいという「感情」のエネルギーに従って行動してしまいます。

多くの人は、頭で考えること(意識)に、やみくもにこころ(無意識)を従わせようとしています。しかし、それでは長続きしません。無理に勉強を続けようとすれば、エネルギー不足になって挫折してしまいます。長続きするためには、無意識にある「感情」のエネルギーを活かさなければいけません。
「勉強したい」という意識的な取り組みが、こころ奥深く、無意識の中のどんなところからやってくるのか、「無意識」の中を「言葉」のサーチライトでよく照らして、その欲求がどこから来るのかを確かめて、「感情」を満足させるように「意識」して勉強すれば、その勉強によって本当の自分を表現できることになり、長続きするかも知れません。

心理療法は、混とんとした「感情(無意識)」を「言葉(意識)」で表現する訓練だといえるかも知れません。

「言葉」にするから、人に伝えることができて、共有することができます。混とんとした「こころ」を「言葉」で表現して、周りにいる大切な人たちに伝えて、本当の自分を受け入れてもらえた時に「癒し」が得られるのだと思います。

日本では、昔から、「言霊」と言って、言葉の重要性が認識されていました。
また、聖書には、こんな一節があります。

「はじめに言葉ありき。言葉は神と共にあり、言葉は神であった。
言葉は神と共にあった。
万物は言葉によって成り、言葉によらず成ったものはひとつもなかった。
言葉の内に命があり、命は人を照らす光であった。
その光は闇の中で輝き、闇が光に打ち勝つことはなかった」
(『新約聖書』「ヨハネの福音書)より)

自分の感情を、言葉で表現してみてください。それが自分を大切にすることにつながります。

 

この話は、椎名雄一さんと、彼に紹介してもらった、
神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡 
ISBN-10: 4314009780
ISBN-13: 978-4314009782
という本に影響を受けています。

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