感染機会と感染経路
私たちは、感染しないために生きているのではありません。また、感染リスクをゼロにすることもできません。
できるだけ、感染リスクを下げながら、やりたいことをやるためには、どうしたら良いのかを考えていたところ、保健所に勤務していた頃からの大先輩、岩室紳也先生に、「感染機会と感染経路」という考え方を教えていただきました。
例えば、先日、ある小学校の先生とお話しする機会がありました。
子どもたちの遊びについて、鬼ごっこはタッチして接触するのでダメだけど、ドッジボールはどうなんだろうと悩んでいると言っていました。
確かに、ボールを共有するからダメ、という考え方もあるかも知れません。そうすると、子どもたちが大好きなドッジボールをする機会が奪われます。
しかし、ドッジボールでの感染経路を考えるとどうなるでしょうか。もし、ボールに感染者の飛沫がつきウイルスが付着したとしても、そのウイルスは、どうやって次の子どもの体内に入るでしょうか。
ボールを扱ったことで手に着いたウイルスを処理しないまま、素手で何かを食べたり、目をこすったりするから感染するのではないでしょうか。だとしたら、終わった後に手を洗えばよいということになります。まれに、ボールが口にあたることがあるかも知れません。 その時はすぐに唾を吐き出しなさい、口をゆすぎなさいと伝えればいいのです。
いずれにしても、生きている限り、リスクをゼロにすることはできません。
感染機会をなくすために、やりたいことを禁止するのではなくて、その行為でどのように感染するのかを考えて、感染経路を遮断する対策を取り、ある程度のリスクを受け入れなければ、何もできなくなってしまいます。
岩室先生は、夜の街応援プロジェクトに協力しておられます。
私も、昔、HIVに感染したくなければセックスをしないことだ、と性教育をしていたことがあります。HIVに感染しないためにセックスをしない人生、ってどう思いますか。
保健所の職員の立場で、そんなことを言っていたから、感染した人たちをふしだらな人たちだと責めるきっかけをつくってしまっていたかもしれません。私は、そのことを反省しています。